panelarrow

告白の拒絶

ところが、やがて、彼女の瞬時も動いてやまぬ活動的な美しい唇を見ているうちに、男は、
「まてよ、あんまり、はやまって、何でもかんでも、今日プロポーズするのはやめにした方がい
いのかも知れない」と、フシと考えてしまったのです。そして女の口許を見ながら、こう考えた
途端、男の心の中から、あんなにまで燃えあがっていた愛の焔がスーツと消えてしまったという
のです。ふたりはにぎやかに郊外を散歩し、そして、それっきり何事もなしに帰ってしまったというお話。
会話の中からその人の性格や望みなどを見つけられれば、


さて彼女の気持はどっちか?
そこで、いったい、この美しく若い女優は、プロポーズしようとする男性に、わざとプロポー
ズさせないために、こうまでしゃべりまくったものなのでしょうか。もしそうだとすれば、自分
は好かないが、相手は自分を愛しているということがよくわかっている男性に対して、こういう
方法をとるのもひとつの賢明な拒絶の仕方かもしれません。自分が好きでもない男性にいったん
愛を告白させておいて、さてこれをことわるよりも、いやしくも告白する機会を与えないことの
方が、いっそう無難でもあり賢明でもあるでしょうから。
けれども、その反対に、もしこの女優がその男を少しでも愛していたとしたら、そして愛する
男とふたりきりで郊外に出ることができたうれしさのあまり、ああまでたてつづけにしゃべりま
くったものとしたら、彼女はついに自分の愛する男性に愛の告白の機会をあたえ得なかった愚か
な女性といわねばなりますまい。

出典:
030

コメントを残す

Required fields are marked *.